2010年01月15日

上原善広「日本の路地を旅する」 13年かけ500カ所 新世代の被差別部落ルポ(産経新聞)

 ルポライターの上原善広さん(36)は、中上健次にならって被差別部落を「路地」と呼ぶ。13年を費やして日本全国の500以上の路地を訪ね歩き『日本の路地を旅する』(文芸春秋・1680円)をまとめた。身を削りながら地を這(は)う極上のルポルタージュだ。自らの出自を重ねつつ、被差別部落の「いま」を、曇りのない言葉で再構成してゆく。“格差社会”を問い直す現代人の必読書に推したい。(篠原知存)

                   ◇

 「東京で『部落問題は解消傾向にある』と話すと、『そんなのあったの?』といわれる。大阪で同じことを言うと、『解消なんてしてない!』と怒られる。この問題には、それぐらい地域差があります」

 ◆ひりひりした当事者感覚

 自身は昭和48年に大阪の路地で生まれた。「差別を受けたことがない世代」と語る。「一生に一回、結婚差別というのはあるかもしれない。それぐらいですね。路地といっても、じつは何もほかと変わらない」

 「それぐらい」という言葉を、聞くこちらは決して軽くは受け止められないのだが、本書はそんなクールさに貫かれている。旅人の目線は、ルポルタージュの目線。ただし、著者の実体験に由来するひりひりとした当事者感覚が、ふらりと通り過ぎる旅であることを許さない。

 その道行きは驚きに満ちている。江戸時代にも牛肉は食べられていた。新潟以北に路地がないといわれるのは解放運動団体が組織されなかったから。沖縄のエイサーは路地の者が移住して伝わった…などなど、目からウロコの事実を次から次に描き出してゆく。

 「文化は重層的なもの。下々の者がいて社会は成り立ってきた。歴史は連続しているのに、タブーになっていることがかなりあるのが残念です。どんどん解明されればいいと思いますね」

 ◆規制する意味わからない

 生と死は表裏一体。さまざまな営みのさまざまな段階を担う人たちがいる。通読すると、見ずにすませてきた明快な事実を、いやおうなく意識させられる。「いま、古地図から路地の地名が消されてます。自主規制する意味がわからない」と上原さんはいう。

 イデオロギーやタブーが邪魔をして語れなかったもの。差別者と被差別者の歯がゆい乖離(かいり)。「路地をつなぐ糸」をたどる旅は、人々を等しくつなぎ直す糸の不在をも強く意識させる。

 「たとえば『引っ越せばいいのに』というのも、素朴な疑問です。運動家にいうと『無知だ、想像力不足だ』と怒られる。だけど逆も言えるはず。路地の人も一般の人も、想像力がお互いに足りない。だからもう一度、一から考えたいと思うんです」

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2010年01月13日

<訃報>東恵美子さん85歳=<本名・南恵美子>女優(毎日新聞)

 東恵美子さん85歳(あずま・えみこ<本名・南恵美子=みなみ・えみこ>女優)8日、急性心不全のため死去。葬儀は近親者のみで行う。2月2日(時間は未定)、東京都渋谷区富ケ谷1の53の12の青年座劇場で劇団葬を営む。喪主は養子の和成(かずなり)さん。

 東京都出身。1948年、俳優座に入団。54年に退団して、山岡久乃らと青年座を結成。その後は中心的なメンバーとして活躍した。舞台「写楽考」で71年度の芸術祭優秀賞、舞台「黄昏(たそがれ)」「ジャンナ」で97年度の芸術選奨文部大臣賞を受賞。テレビドラマや映画でも主に脇役として、多数の作品に出演。社会心理学者の南博氏と別居した形の「自由結婚」でも話題になった。

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政党交付金見えぬ使途、自由党解散で返納せず(読売新聞)

 鳩山首相や民主党の小沢幹事長の「政治とカネ」が問題化する中、税金を原資とする政党交付金制度の在り方が改めて注目されている。

 自民党は18日召集の通常国会で、小沢氏が党首を務めた自由党が解散した際、政党交付金を国庫に返納しなかったことなどを追及する構えだ。

 ◆揺さぶる自民◆

 「藤井さんが辞任しそうだ。自由党幹事長当時のカネの問題を国会で追及されたくないということだ」

 藤井裕久・前財務相の辞任に先立つ今月3日夜、自民党の閣僚経験者が谷垣総裁に電話でこう告げた。この議員も自由党出身で、当時の政治資金の不透明な処理が小沢氏や藤井氏の「弱点」であると推察した。予算編成を巡る小沢氏とのあつれきや健康不安だけが辞任の理由ではない、というわけだ。

 自由党は2003年9月に解散し、民主党と合併した。自由党は解散当日、すでに党に支給されていた政党交付金を、党の政治資金団体だった「改革国民会議」に5億6096万円、所属国会議員の政治団体などに500万円ずつ計1億7500万円を寄付するなどして使い切った。

 政党助成法は、解党時の残金について「総務相が返還を命ずることができる」と定めており、自由党の処理方法には「返還逃れ」との指摘がある。

 自民党は18日召集の通常国会に、解党を決めた政党が他の政治団体に政党交付金を寄付することを禁じる政党助成法改正案を提出する構えだ。成立の見通しはなく、民主党、とりわけ小沢氏を揺さぶる狙いであるのは明らかだ。

 改革国民会議は現在も一般の政治団体として存続しており、08年時点で10億円余りの資金を持つ。08年の政治資金収支報告書によると、小沢氏を支持する民主党の若手衆院議員グループ「一新会」に500万円を寄付するなど、小沢氏の政治活動を支えている。

 西松建設の違法献金事件では、検察側は改革国民会議が献金の受け皿になったと追及している。自民党は「返還すべきだった政党交付金と違法献金が今も小沢氏のために使われているなら、決して終わった話とは言えない」(幹部)と主張している。

 ◆小沢氏が差配◆

 自由党時代の政治資金問題はこれにとどまらない。

 自由党の政治資金収支報告書は、藤井氏個人に02、03両年で計約16億円を支出したと記載しているが、「あまりに巨額で不自然だ」との指摘が出ている。自由党OBの一人は「資金の扱いは小沢氏が決めていた。藤井氏は幹事長として名義を貸しただけではないか」と見ている。

 背景には、政党が政治家個人に渡した形を取れば、金額の制限もなく、使途報告書の提出なども求められないことがある。巨額の政治資金の実際の支出先は不透明になる。

 政党の政治資金を議員個人に渡して「組織対策費」などとして記載する例は、民主、自民両党にもみられる。

 民主党が「組織対策費」として特定の議員に資金を集中させるようになったのは、小沢氏が代表に就いた後の06年9月からだ。

 民主党の政治資金収支報告書によると、06〜08年の間、財務委員長と国会対策委員長を歴任した山岡賢次衆院議員に計17億310万円、山岡氏の後任の財務委員長である佐藤泰介参院議員に計5億3000万円が支出され、2人に計22億3310万円と集中している。このほか、輿石東参院議員会長に計4000万円、鉢呂吉雄選挙対策委員長(当時)にも計1500万円が支出されている。

 自民党も、06年の収支報告書によると、幹事長を務めた武部勤、中川秀直両氏に対し、在任中にそれぞれ4億5300万円、2億3900万円を支出している。

 (政治部 鈴木雄一、山田真也)

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